大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和37年(ワ)6558号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで、被告長島について商法二六六条の三による責任があるか否かにつき考察を進める。

被告山田、同奥原が共謀のうえ、訴外会社が原告外三社から買い入れた商品のほとんど全部を入質又は投げ売りし、それによつて得た金の一部を訴外会社に入金し、その余は着服又は費消した結果、訴外会社は無資力となり原告に対する商品代金の支払ができなくなつたことは前記認定のとおりである。会社の代表取締役は会社を代表してその業務全般を統轄する権限と職責を有するものであり、善良な管理者の注意をもつて会社財産を保管すべき義務を負うとともに、他の取締役の業務の執行についてもこれを監視し、その過失又は不法行為を未然に防止すべき義務を負うものである。被告山田、同奥原に仕入商品のほとんど大部分を質入又は投げ売りの不正処分をされたことについては、前記認定のように、訴外会社は被告等三名か取締役であり他の使用人も数名しかいない小規模な会社であること被告山田、同奥原の不正処分は会社設立後日をおかずして継続的に行なわれ、短期間に大量になされたこと、被告長島は経理事務を担当し営業に関する重要な帳簿の記帳をし訴外会社の営業状態をつぶさに知りうる地位にあつたこと等に鑑み、被告長島は代表取締役としてこの職務を行なうにあたり、会社財産保管義務は勿論、被告山田、同奥原の業務執行を監督しその過失又は不正行為を未然に防止すべき義務を著しく怠つたものというべきである。

そして、原告の蒙つた前記損害は、被告長島がその職務を怠らなかつたならば生じなかつたであろうと考えられるので、被告長島は商法第二六六条の三の規定により原告の蒙つた損害を賠償すべき義務がある。

過失相殺についての民法第七二二条第二項の規定は、損害の公平な分担という見地から過失ある被害者には生じた損害の一部又は全部を負担させるべきだとしたもので、商法第二六六条の三第一項の損害賠償責任についても右規定の趣旨は認めてしかるべきであるから、過失相殺の規定は商法二六六条の三第一項の場合にも適用されると解すべきところ、当裁判所は諸般の事情を考慮して、原告は被告長島との間では前記過失により前記損害中その四分の一を分担するのが相当と解する。(岡松行雄 石崎政男 今井功)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!